【はじめての方向け】脱腸ってなに?手術をしたあとに再発する可能性はあるの?

「脱腸」は、立ったときの弾みやお腹に力を入れたときに、太ももの付け根あたり(鼠径部)にふくらみやこぶが出てきて、手で押さえると元の場所に引っ込むといった症状が特徴的な病気です。そこで今回は、はじめての方向けに脱腸の基本となる情報をまとめた上で、「手術をしたあとに脱腸が再発する可能性」や「再発の予防法」について色々紹介します。

脱腸(そけいヘルニア)の基本

脱腸(そけいヘルニア)

「脱腸(だっちょう)」とは、正式には「そけい(鼠径)ヘルニア」のことを指します。中年男性の発症率が高いですが、実際は年齢や性別に関係なく、誰にでも発症する可能性のある病気です。

・脱腸の初期症状
脱腸の初期症状としては、お腹に力を入れたときに「太ももの付け根あたりにふくらみやこぶが出ている」、「手で押さえると引っ込む」といった症状がみられます。
初期段階では痛みを感じないことが多いため、気になってはいても「引っ込むからまだ大丈夫だろう」と軽く考えて、何もせずに放置されてしまうケースが多く見受けられます。
成人の方が脱腸を発症した場合、そのまま自然に任せて良くなることは決してありません。脱腸を治すには、必ず手術を受ける必要があります。
初期段階であれば、入院をすることなく日帰りで脱腸の手術を受けられる可能性があります。そのため、「脱腸の症状に気づいたとき」や「もしかして脱腸かも?」と思ったときは、そのままにせず早めに病院で診察や治療を受けましょう。
・危険な嵌頓(かんとん)
脱腸の初期段階は、今すぐに手術が必要といった緊急性は高くありません。ただし、「突然下腹部に激痛が走った」、「手で押さえても引っ込まない」、「いつもよりも硬い気がする」といった状態になると、「嵌頓(かんとん)」の可能性があるため注意が必要です。
嵌頓(かんとん)になると命に関わる重篤な状態に陥る可能性が高くなります。その場合、緊急手術が必要になり、初期段階で受ける手術に比べて手術が長引き、切開の範囲が広くなれば回復までに時間がかかり長期の入院生活を余儀なくされます。
そのため、「まだ痛くないし、症状も軽いから大丈夫」と自己判断するのではなく、脱腸や消化器系の病気を専門にしている医師の診察や検査を受けて、初期の段階からしっかりと治療を受けるようにしましょう。

手術をしたあとに脱腸が「再発」する可能性は?

脱腸(そけいヘルニア)

脱腸(そけいヘルニア)の診察や治療を初めて受けられる患者さんの中には、「手術を受けてもまた脱腸が再発するのでは?」と不安に思われている方も少なくありません。

・メッシュを使う手術法の再発率は1%以下

昔は、筋膜の組織を縫い合わせる方法で脱腸手術が行われていましたが、この術法はメッシュを用いる術法に比べて再発率が高く、手術を受けたあとの再発率は10%程度と報告されています。
一方、現在一般的に行われているメッシュを使った術法の場合、手術を受けたあとの再発率は「1%以下」と言われています。脱腸手術を受けたあとに再発するのは稀なことですが、再発する可能性はゼロではありません。

例えば、メッシュを使った術法で手術を受けても、メッシュによる覆いが不十分であれば、その部分にくぼみが生じて脱腸が再発するケースがあります。このような原因で再発した場合は、古いメッシュの大部分を摘出して、新しいメッシュを適切な範囲に敷くための再手術を受ける必要があります。
また、脱腸を起こしている部分がもともと大きかった場合や、長期にわたり脱腸の症状が放置されていた場合、高度肥満(BMI35以上)の方の場合、手術を受けたあとの再発率が高い傾向にあります。

脱腸(そけいヘルニア)の治療を専門とする病院には、「他の病院で手術した脱腸が再発した」との理由から受診される患者さんが多くいます。再発に対する治療は非常に高い技術が必要になりますが、専門家の医師として腕の見せ所であることから積極的に相談を受けつけています。

脱腸って予防できるの?

脱腸(そけいヘルニア)

脱腸(鼠径ヘルニア)を発症する原因は解明されていませんが、脱腸になりやすい方の傾向として「加齢」や「職業」、「生活習慣」などが関係しているのでは、と考えられています。

脱腸は、40才以上の中年男性の発症率が非常に高く、その理由は「加齢に伴い、腸などの内蔵を支える筋膜が衰え始めていること」が関係していると言われています。
ほかにも、製造業や運搬業、長時間の立ち仕事が多いサービス業などに就いている人は、脱腸の症状が多くみられる傾向にあります。これは重たい荷物や長時間の立ちっぱなしでいることで、常に腹圧のかかった状態に身を置いているためと考えられています。

・脱腸の発症や再発をできるだけ回避するための予防策

脱腸の発症を予防する、あるいは手術を受けたあとの再発を予防するには、脱腸になりやすい人の傾向を見ながら予防策を考えることが大切です。

例えば、加齢に伴い筋膜が衰え始めることで脱腸を発症しやすい中高年の方の場合、「適度に運動をして若々しさを保つこと」を意識することが大切です。ただし、筋膜を鍛えて再発を予防しようと過度な腹筋運動をする人がいますが、このような運動は腹圧をかけ過ぎることになるのであまり効果はないと言われています。
また、お腹に力をいれる仕事が多い職業の方は、「重たいものを持つ機会をできるだけ少なくする」、「立ちっぱなしでいる機会をできるだけ少なくする」ということを意識することが、脱腸予防や再発の防止に役立つのではと考えられています。

年齢や性別にかかわらず、「便秘症の方」や「肥満の方」なども脱腸を発症しやすい傾向があります。便秘や肥満などは強い腹圧をかけてしまっている可能性があるので、排便をするときは力まず、「食生活を改善するなどして便秘を解消することが大切」です。肥満気味の方は、「運動と食生活の改善で肥満を解消すること」が脱腸の発症や再発の予防につながる可能性があります。

再発率が低い腹腔鏡による脱腸の日帰り手術

脱腸(そけいヘルニア)

キズが小さく、痛みの少ない脱腸(そけいヘルニア)手術として、多くの患者さんに選ばれている治療法が「腹腔鏡による脱腸の日帰り手術」です。
3㎜~5㎜の細い器具を使用した手術法で、従来の開腹法に比べて手術によるキズが小さいことから回復が早く、日帰り手術に適した麻酔薬を採用することで手術を受けた当日に帰宅できる治療法です。
腹腔鏡による脱腸の日帰り手術は、昔よく行われていたような組織を縫い合わせる方法ではなく、非常に安全性が高いポリプロピレンやポリエチレンという素材を使ったメッシュを用いて穴を面で覆うことから、「再発率が低い」ということから多くの患者さんに選ばれています。

手術を受けたのに同じ場所で脱腸が再発してしまった患者さんの中には、組織を縫い合わせる術法が主流だった時期に手術を受けて、月日の経過とともに縫い合わせた部分がもろくなり、再発してしまうことがあります。このような場合も、自然に再発した脱腸が治ることはないので、症状に気づいたときは早めに専門の医療機関を受診し、根治に向けてしっかりと治療を受けられることをお勧めします。

腹腔鏡(内視鏡)を操作に長けていて、高度な技術をもつ専門の医師による手術を受けることができれば、他院で手術を受けたあとに再発した脱腸に対しても、大きな切開を加えずにキズが小さく痛みの少ない腹腔鏡による手術を受けられる可能性があります。
再発した脱腸の治療に、腹腔鏡による手術が可能かどうかを判断してもらうためにも、症状が軽いうちに「脱腸(そけいヘルニア)の専門家がいる医療機関」に相談してみてください。